2023年4月1日 更新
軽井沢町は、2050年にCO₂排出実質ゼロにすることを表明する「CO₂排出実施ゼロ(ゼロカーボンシティ)」を宣言しており、その実現のため、今ある技術を普及展開させていく他、イノベーション(新たな技術革新)を活用した温室効果ガスの排出削減を目指しています。
イノベーションは先端学術による技術革新も含まれており、軽井沢町においても新たな視点を取り入れ、加速的にアクションを起こしていく必要があります。軽井沢町は令和4年6月7日に信州大学社会基盤研究所(以下「基盤研」という。丸橋昌太郎所長)及び東京大学先端科学技術研究センター(以下「先端研」という。杉山正和所長)と「世界的研究拠点としての軽井沢先端学術プラットフォームに関する覚書」を調印しました。
本プラットフォームは、総勢50人を超える研究者が集まり、AI・ICT等の先端学術を活用して、カーボンニュートラルを目指すとともに、教育や文化を育むことも目的としており、人々の心豊かなまちづくりを推進していきます。
なお、先端学術の実証実験を推進する他、世界的な研究者が子どもたちをはじめとした地域住民と交流することにより、教育の充実化が図られ、カーボンニュートラルに貢献する人材育成や新しい産業創出を通して、地域活性化に繋げていきます。
【写真1 調印式の様子】調印式参加者による記念撮影。左から河野龍興(先端研教授)、玉井克哉(先端研/基盤研教授)、丸橋昌太郎(基盤研所長)、杉山正和(先端研所長)、藤巻進(町長)、柳澤宏※(副町長)、森憲之(総合政策課長) ※柳は木夕卩 |
本プラットフォームは、地方応援税制(企業版ふるさと納税)の寄附を財源に運用することから、軽井沢町では令和6年度(2024)末までに30億円の寄附金達成を目指します。なお、令和3年11月26日付けで、内閣府より「まち・ひと・しごと創生寄付活用事業に関連する寄附を行った法人に対する課税の特例(地方応援税制)」を活用した地域再生計画の認定を受けており、法人関係税から税額控除が適用されます。企業の皆様方におかれましては、本プロジェクトを通じて、理想を共有するとともに、軽井沢町とのパートナーシップをご構築いただきますようお願いします。
(1)先端研究者招聘事業と(2)新産業創出支援・人材(AI・DX・グローバル)育成事業を2本柱とする本プラットフォームは、基盤研及び先端研が有する研究基盤とその成果を活用して、軽井沢町をAIとカーボンニュートラルのモデルシティーにすることを目指します。また、町内の学校とも連携し、AIに強い人材や新しい産業創出のための先進的教育を推進していきます。これら2つの事業により、AI・データサイエンス産業や人材の東京一極集中を打破し、地方活性化を推進していきます。
本プロジェクトでは、(1)先端研究者招聘事業として、基盤研及び先端研が有するAI等の最先端の科学技術を活用して、データサイエンスに基づくカーボンニュートラルを目指していきます。
1000年後の地球を守るため、地球全体でカーボンニュートラルを目指していくことが求められています。軽井沢町は、カーボンニュートラルを実現するため、多様な科学技術を活用して、世界に先駆け、その模範となるモデルシティーになることを目指します。
ここでは、カーボンニュートラルに資する、新しい軽井沢ブランドの構築基盤となる10の実証実験からなる研究をご紹介致します。随時、先端研の研究室も参画していきます。
太陽光エネルギーの弱点は、夜は発電できず、冬には発電が弱いことにあります。他の再生可能エネルギーにも、また同様に弱点があります。本研究ではエネルギーロスが極めて少ない水素吸蔵合金を活用して、夏に発電した電気を貯蓄し冬に使えるようにするための実証実験を行います。
自動車が排出するCO₂削減のためには、ガソリン自動車に代わる移動手段(モビリティ)を開発することが必須です。エネルギー研究や交通情報研究などの成果を踏まえて、自動運転やモビリティ走行に関する実証実験を行います。
いかなる地域においても渋滞問題は存在します。これを解決するにあたっては、交通情報をデータとして取得する仕組みと、これらの分析の結果を踏まえた解決策を実装することが重要です。そこで、軽井沢町では、LPWA※1によって交通量を自動的に取得できるシステムを開発して、これを踏まえた渋滞問題の解決策の実証実験を行います。ガソリン自動車から他のモビリティへの誘導を進めることでカーボン削減に貢献します。
※1 低消費電力で長距離広範囲の無線通信を可能とする技術
※崎(大→立)
カーボンニュートラルを実現するためには、移動手段のエネルギー転換を図っていくことが求められています。特に、ウォーキングや自転車等の人力のモビリティへの誘導は、健康長寿の観点からも極めて重要になってきます。
軽井沢町では、すでに、認知症フレイルを予防するための軽井沢健診をスタートしています。
軽井沢健診では、夜間血圧や歩行姿勢など様々なデータを取得して認知度低下の要因を分析しています。軽井沢健診などで得られた地域住民の健康データを活用して、ウォーキングや自転車の活用を促進する健康長寿政策を立案していきます。得られた健康データは、認知症やフレイル予防にも活用し、住民の健康寿命延伸を目指します。
【写真2 軽井沢健診の様子】
現在のわが国の森林は、20世紀に入って人工的に形成されてきたものが多くみられます。軽井沢町も例外ではありません。学術的には、人工的に形成されてきたものは、カーボンニュートラルや防災の観点からみて、役割を終えている、もしくはそのまま維持することがかえってマイナスになることもあります。そのため、景観や森林の保全はもちろん、人々の暮らしの安全を守るためには、科学的なデータに基づく総合的なまちづくりの観点から進めていくことが大切です。科学データに基づいて、災害対策や生物多様性の保全も視野に入れた総合的なまちづくりの政策を立案していきます。
都市のカーボンニュートラルを達成するには、その都市内での工場や農場からのCO₂排出だけでなく、都市住民や観光客が消費する製品やサービスの生産過程で出されるCO₂排出量まで含めて考える必要があります。そこで、軽井沢町での消費データを中心に、製品やサービスの世界のライフサイクル全体でのデータ収集、分析、環境評価を実施します。
東大先端研では気候変動研究にも力を入れています。地球規模の気候変動の予測を分析していくことは、カーボンニュートラル政策の評価をしていく上で、不可欠です。そこで、軽井沢町では地球規模の気候変動を観測・分析していきます。
農業等においてロボットやAIを活用していくことは、結果的に業務の効率化につながるので、カーボン削減にもつながっていくことが期待できます。そこで、軽井沢町では、気象データ等とも組み合わせて、データ駆動型農業※2の実証実験を行っていきます。
※2 データに基づき栽培や経営の最適化を行う農業
カーボンニュートラルとは、原始時代に回帰することを目指すものではありません。自然環境を科学技術によって調和しながら100年後の豊かさを求めていくものです。そのためにアートやデザインの観点を導入しながら問題解決を行うことが不可欠です。軽井沢町におけるカーボンニュートラルのグランドデザインとして、アートデザイン研究を行いながら、医療・福祉・教育にも横断して橋を架けながら豊かな生活を構想し提案していきます。
以上のような実証実験を安全に行うための社会科学研究も同時に行なっていきます。予測が難しい社会のリスクガバナンス方法として、アジャイルガバナンス※3という手法が世界中で注目されています。軽井沢町の研究では、アジャイルガバナンスも実装して、地域住民が安心しながら上記の実証実験を推進し、研究成果の社会実装を目指していきます。
※3 システム、運用方法、ゴールを柔軟に変化させ、ステークホルダーを巻き込みつつアップデートすることで最適なガバナンス実現を目指す政策モデル
軽井沢町は、(2)新産業創出支援・人材(AI・DX・グローバル)育成事業として、基盤研・先端研に加えて、町内の公立学校をはじめ、UWC ISAK、軽井沢風越学園などとも連携して、上記の研究成果等を使って、新しいグローバルな時代を切り開く人材を育成していきます。起業家や投資家、弁護士などの協力を得て、ビジネスコンテストを開催することで、生徒や学生にベンチャースピリッツを育成して、軽井沢町の新しい産業の創出にも貢献していきます。
〇企業版ふるさと納税に関すること:総合政策課企画調整係(0267-45-8504)
※申出書等のリンク先:(下記の関連リンクをご覧ください)
〇大学連携事業に関すること:総合政策課まちづくり推進室(0267-45-2500)
〇基盤研リンク
https://www.shinshu-u.ac.jp/institution/rcss/
〇先端研リンク
https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/index.html
上記の内容は以下のPDFファイルにまとめています。
世界的研究教育拠点としての軽井沢先端学術プラットフォーム(PDF/1299KB)