軽井沢町 歴史民俗資料館だより
2025年1月号
冬期休館のお知らせ 11/16~3/31
歴史民俗資料館・旧近衛文麿別荘(市村記念館)では11月16日~3月31日まで冬期休館しております。
休館中、歴史民俗資料館では、常設展示替えや資料整理などを実施しています。学校利用、団体利用等で見学を希望される方は恐れ入りますが当館へ事前にご連絡ください。(0267-42-6334)
【予告】3/22(土)かるいざわ歴史・民俗講座開催のお知らせ
題目:「峠の祭祀 古東山道、東山道を往く~入山峠祭祀遺跡~」
講師:長野県立歴史館 考古資料課長 櫻井秀雄氏
場所:ギャラリー蔵(歴史民俗資料館から100m先)
定員:50名程度(どなたでもご参加できます)
【概要】
標高1000mを超える場所に、古墳時代の人々による祭祀の痕跡があります。日本で3カ所しか発見されていない峠の祭祀遺跡のうち一カ所が、ここ長野県軽井沢町に残されていました。(なお群馬県との境に位置するため。群馬県側、長野県側の双方で調査がなされました。)入山峠祭祀遺跡(いりやまとうげさいしいせき)といいます。古代の人びとの神に対する意識や行動を分析するうえでも重要であり、また古東山道、そして東山道という古代の主要な道の存在を明らかにするうえでも重要な遺跡です。近年は櫻井秀雄氏の研究によって峠の祭祀遺跡の解析が進められています。本講座を通じて新しい研究成果を広くみなさまと共有したいと考えます。
(写真:当館所蔵の入山峠祭祀遺跡の一部 2024年9月9日撮影蒲原)
※お申し込み方法などの詳細は2月より特設サイトでお知らせいたします。
冬期休館中の資料整理(音声・映像資料編)
当館にはおよそ500~600ほどの音声・映像資料があります。過去に一般販売されたものから、町の職員が講演会の音声を録音したテープなど内容はさまざまです。当館の資料整理にあたっては、形態ごとに分類しています。音声資料は、レコード(LP・SP・ソノシート(フォノシート))、カセット(マイクロカセット)、Soni-Tape、8トラック方式カートリッジ、CDなど。映像資料においては、16mmフィルム、ビデオテープ、DVDなどがあります。
今後どのように音声や映像を、未来へ残していくか。長期保存できる方法を模索していきます。
特集 1950年代の肥料をめぐる農業システムの変化~清浄野菜から~
[商札]「信州 浅間高原清浄蔬菜」 表裏面画像」
図は軽井沢で、1956年に清浄蔬菜(せいじょうそさい)をうたい出荷していたことを示す商札です。「信州」の白文字と噴煙をあげる浅間山、白菜・キャベツ(かんらん)のイラストが描かれています。
「蔬菜」という言葉は、今でこそ馴染みはありませんが、栽培作物のことを指します。現在は「野菜」と同じ意味になっているので、ここでも「野菜」と表します。
それでは「清浄野菜(蔬菜)」という言葉はいったいどのような意味なのでしょうか。
この商札が使用される約1年前の1955(昭和30)年に厚生省から「清浄野菜の普及について」が発布され、そこに言葉の定義が記されていました。
【清浄野菜の定義】
清浄野菜とは左(※下記)に掲げる条件下に栽培され、かつ、腸内寄生虫卵(仔虫を含む。以下同じ。)及び経口伝染病病原菌が付着しているおそれのない野菜類(果菜類及びいちごを含む。以下同じ。)をいうものとする。
1 栽培する耕地は、過去一箇年以上前から衛生的に未処理の屎尿を使用せず、かつ、隣接地又は流水その他により、衛生的に汚染の虞がない等、清浄野菜の栽培上支障がないと認められる処であること。
2 直接栽培に施用する肥料は堆肥、化学肥料、粕類等によることを原則とし、屎尿については、衛生的に未処理のものを絶対に使用しないこと。
3 屎尿については、堆肥の材料として用い、高温醗酵等により衛生的に完全に処理された場合、又は当初から分離集取せられた尿の場合に限り、その施用を認め ること。ただし、この場合の堆肥等もなるべく前作又はその基肥としてのみ施用するものとし、その施用量も可及的に少量に止めること。
国の事業として清浄野菜の栽培が推し進められた背景には、寄生虫による病気が社会的に問題になり、下肥を用いた栽培にもその原因があると判断されたためです。
なお軽井沢では、明治時代より外国人避暑客向けにキャベツ(かんらん)栽培が盛んに行われていました。(『軽井沢町誌 歴史編(近現代)』262頁参照)西欧では「下肥」を用いない栽培が一般的だったため、外国人避暑客向け(1952年までアメリカ駐留軍が軽井沢のホテルを接収)ということであれば、「下肥」を用いていないことを示す「浅間高原清浄蔬菜」のほうが、購買意欲をかきたてられる商品作物だったことが考えられます。そして日本国内においても、国家的な施策のもと「衛生」への意識が高まっていき、次第に「下肥」は利用されなくなっていきました。
肥料をめぐる日本の農業システムが、大きく変化していく理由の一端がこの地域資料に残されています。
いっぽうで、2008年(平成20年)に環境省『環境・循環型白書』から「循環型社会の歴史」として下肥の歴史を紹介しています。「江戸時代のし尿の衛生的なリサイクル」として現代にも得るものはあると評価しています。こうした政策上の変化も踏まえて、資料をあらためて見ると、非衛生的・汚いからと遠ざけてきたものの意味を問いかける資料でもあるかと思います。
(学芸員・蒲原)
過去の「歴史民俗資料館だより」をご覧いただけるようにしました。2014年から最新号までの記事を読むことができます。
2024年過去おたより
・歴史民俗資料館だより2024年12月号「特集 冬期休館中の資料整理(古地図編)」(PDF/758KB)
・歴史民俗資料館だより2024年7・8月号特集「下肥と民具」(PDF/842KB)
・歴史民俗資料館だより2024年6月号特集「軽井沢の水道事業~上水道創設編」(PDF/733KB)
・歴史民俗資料館だより2024年5月号特集「木製水道管」(PDF/721KB)
・歴史民俗資料館だより2024年4月号特集「石仏と常設展示テーマについて」(PDF/893KB)
2024年9~11月号はホームページの更新業務に集中し未刊行となりました。
お詫び申し上げます。今後はより定期的な情報発信につとめてまいります。
軽井沢町「歴史民俗資料館だより」 アーカイブズ
・歴史民俗資料館だより 令和2(2020)年度 (PDF/387KB)
・歴史民俗資料館だより 令和元(2019)年度 (PDF/495KB)
・歴史民俗資料館だより 平成30(2018)年(PDF/3MB)
・歴史民俗資料館だより平成29(2017)年度(PDF/2MB)
・歴史民俗資料館だより平成28(2016)年度(PDF/654KB)
・歴史民俗資料館だより平成27(2015)年度(PDF/873KB)
・歴史民俗資料館だより平成26(2014)年度(PDF/478KB)
このページに関するお問い合わせ
- 教育委員会 生涯学習課 歴史民俗資料館
-
電話番号:0267-42-6334
電子メール:shiryoukan(アット)town.karuizawa.nagano.jp
備考:メール送信時はE-mailアドレスの(アット)を半角@に変換してから送信下さい。